「鉄道会社の仕事」と聞くと、皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?
駅のホームや、改札に立ってる駅員さんや、電車の運転士さんとかをイメージするかな。
制服着て真面目に仕事してるって感じだよね。なんか時間に厳しそうかも?
私は18年間、鉄道の仕事に携わっていました。駅の改札や、きっぷを売る窓口、電車の車掌や運転士など、皆さんがイメージされるような仕事を一通り経験しました。
その後、IT系の企業に転職して、現在はシステムエンジニアとして働いています。
鉄道業は少し特殊な業種であるため、独特の風習や業界用語のようなものがあります。長年従事していると、それが当たり前のように感じ、意識せずに行動したり話していることがあります。
自分では常識と思ってしまっていることが、世間一般では通じなかったりするのです。(慣れって怖いですね。)
今回は、鉄道会社で18年働いた私が、一般企業に転職して驚いた7つの話です。この記事を読めば、鉄道会社の独特な風習を少し垣間見ることが出来ます。
鉄道の仕事に興味のある方や、鉄道のことなんて全然知らなかったよ~という方も、くすっと笑える内容になっています。ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事を書いている「あまなっと」です。鉄道会社に18年勤め、車掌や運転士をやってました。現在はインフラ系のSEをしています。私のプロフィールはこちらです。
鉄道の仕事について興味のある方は、こちらの記事もご覧ください。
その1. 制服を着なくていい
鉄道会社には実はたくさんの部署があり、制服を着ない部署も存在するのですが、私は運輸系の直接部門に所属していました。要は、ごく一般的な鉄道に直接的に関わる部署という感じです。
ですので、基本的に年がら年中制服を着用して仕事をしていました。一言で『制服』と言っても、かなり数が多く、ザッとこんな感じです。
- 制帽(夏用×1、冬用×1)
- 上着(夏用×2、冬用×2)
- シャツ(半袖×4、長袖×2)
- ズボン(夏用×2、冬用×2)
- 防寒具(コート×1)
クローゼットの三分の一は、制服で場所を取っていました。退職する際に一式返納しましたが、持って行くのに一苦労するぐらい量が多かったです。(それだけ手厚く貸与して貰ってたということですね。感謝です。)
そんな長年の充実した(?)制服生活が終わり、普通の中年サラリーマンとしての生活が始まったわけですが、「オフィスって何を着ていけばいいんだ?!」と困りました。
慌ててスーツやシャツを買い揃えに走ったのでした。
制服はたくさん持ってたのに、私服があまりなかったのね。
その2. 毎日家に帰れる
私が所属していた鉄道会社の部門では、日勤の仕事もありましたが、基本的には泊まり勤務がほとんどです。泊まり勤務とは、色んなパターンがあるのですが、例えば朝9時に出勤して翌日の朝9時に仕事が終わる、つまり24時間勤務です。
「えっ、寝ないで24時間耐久地獄・・・?」とビックリしたあなた、そんなにブラックではありません。休憩時間や仮眠時間を含めて全体の拘束時間が24時間で、一日あたりの労働時間は8時間を超えないように調整されています。(ダイヤ乱れなどイレギュラーな事象が発生した時は、耐久地獄になる時もあります、、。)
なので、基本的に朝家を出たら、帰宅するのは明日の昼頃、という生活でした。仕事中に「あっ、明日雨なのに傘忘れた!」とか、「今夜の金曜ロードショー、録画予約忘れた!」なんていうことがよくありました(笑)。
替えの靴下忘れたり、昼と夜のお弁当作ったのに持って行くの忘れたり、忘れ物はほんとに多かったです(-_-;)
普通の中年サラリーマンになった今では、毎日家に帰ることができるので、何か忘れ物をしても、「どうせ今日家に帰れるし、大したことないわ」って思考になっています。(いや、ちゃんと用意しとけよ。)
その3. 歓送迎会や忘年会は昼間じゃなくて夜
職場の同僚や上司も、基本的に朝出勤して、翌日の朝に仕事が終わります。皆がそういった勤務体系なので、歓送迎会や忘年会などの行事も、仕事終わりの昼間に開催されます。
また、仕事終わりに仲の良い同僚と「ちょっと一杯寄って行こう~」っていうのも、当然昼間です。24時間の拘束から解き放たれた開放感は凄まじく、仕事終わり(非番、アケとも言います。)の食欲とお酒の進み具合はかなりのものでした。
現在の会社に転職してから、飲み会のお誘いを受けることが時々あります。当然、夜に行われるのですが、その度に「そっか、普通は飲み会って夜やるもんなんだ。」と、改めて気付きました。
お店で昼間からお酒を飲んでる人たちは鉄道関係の人が結構います。(あと警察や消防関係など泊まり勤務の人が多い印象です。)
その4. 声が小さい人が多い
鉄道会社の直接部門は、基本的に体育会系です。『指差確認喚呼』、『車内放送』、『無線連絡』など、ともかくハキハキと明瞭な声で話すことが求められる場面が多いです。
そんな環境で長年働いていたので、自分も周りの人も皆さん声が大きく、ハキハキと話す人が多かったです。段々と、「大きい声、ハキハキとした話し方」が普通だと思うようになりました。
IT企業に転職後、初対面の方の隣で一緒に作業をさせて貰うことがありました。その方は体格ゴツめのおじさまで、タイピング速度が超高速な、バリバリのエンジニアという印象でした。
緊張でいっぱいだった私は、「今日はよろしくお願いします。」とご挨拶しました。すると、「あ・・・が・・・っふ。」と、聞き取れないほど小さな声で何かを発せられました。
あくまで個人の感想ですが、IT業界には、声が小さく、ぼそぼそとした口調で話す人が多いです。(いや、鉄道業界の人たちの声が大きかっただけなのかも、、?)考えてみれば、IT系の仕事では大きな声で話すことが求められる場面なんて、ほぼないんですよね。(営業の人とかはあるかも?)
「世間には声が小さい人が多いんだな。」と、ちょっとしたカルチャーショックを受けたのでした。
今の職場の同僚たちは、みんな声が小さいので「えっ?」て、よく聞き返すようになりました笑。
その5. 「トケ」が通じない
鉄道には、駅名をカタカナ2文字で表した『電報略号』というものがあります。(鉄道電報や列車ダイヤで使用されています。)なんじゃそりゃ?って方のために、『電報略号』の一部をご紹介します。
- 東京駅・・・トウ
- 名古屋駅・・・ナコ
- 京都駅・・・キト
- 大阪駅・・・オサ
カタカナ2文字で駅名を表しているのね。なんとなく何駅なのか想像できるわね。
上記の『電報略号』の仲間で、業務の中で日常的に使われていた略語があります。主に、以下の略語たちです。
- 連絡・・・レラ
- よろしく・・・ヨロ
- 運転休止・・・ウヤ
- 取り消し・・・トケ
これらの略語を使用して、
「〇〇駅に△△△列車の車内捜索の件、レラヨロ。」
「×××列車のウヤ、内容トケ、以上。」
のような、やりとりや会話が日常的に行われており、私自身も当たり前のように使用していました。
IT企業に転職後、同僚と一緒に調べ物をしていた時に、見つけたサイトのURLをチャットで送った後、違うURLを送っていることに気付き、思わず「今送ったのトケで!」と言ってしまいました。もちろん、同僚には「は?」という顔をされました・・・。
一般企業に勤めたら、鉄道用語なんて絶対に使わないぞと思っていたのに、18年間染みついた習慣はなかなか抜けないことを痛感した時でした。
今でも、台風で電車が運休になったニュースを見ると、「ウヤってるな~。」とか言ってしまいます。なかなか職業病が抜けない・・・。
その6. 健康診断は年に1回だけ
鉄道会社に勤めていた18年間、健康診断は年に2回受診していました。そして、それが当たり前だと思っていました。
今の会社に転職して1年が過ぎた頃、「あれ、そういえば年に1回しか健康診断受けてないよな?やばい、忘れてる・・・?」と心配になりました。
調べてみると、「特定業務従事者の健康診断は、安衛則第45条にもとづき、当該業務への配置替えの際および6か月以内ごとに1回、定期的に実施しなければならない」(参考:特定業務事業者の健康診断)という決まりがあるようです。
鉄道会社での勤務時は、『深夜業を含む業務』をしている特定業務従事者に該当していたため、年に2回の健康診断を受ける必要があったのです。IT企業に転職した現在は、特定業務従事者ではなくなったので、健康診断は年に1回でOKになったというわけです。
半年に1回は健康診断に行く生活が18年間続いていたので、健康診断が年に1回だけでいいというのは、結構衝撃でした。
しかし、今までは「そろそろ健康診断が近いから、節制しなくては」と、健康を意識する時期が年に2回あったのが、年に1回だけに減ってしまうと、途端に緩みっぱなしになってしまいます。
健康寿命を保ちたい中年リーマンとしては、何か対策を考えなきゃいけないなと、危機感を覚えています。
その7. きっぷに対する知識が乏しい
私は駅で約4年間勤務し、窓口でのっぷ発売も行っていました。きっぷに関する知識や制度、いわゆる『営業制度』はそれなりに精通しています。(10年以上前の知識ではありますが。)
今の会社に転職してから、遠方へ出張に行く機会が度々あります。その際、新幹線の予約を取って領収書を会社に提出する、といった工程が必要になります。
鉄道員時代は出張なんてなかったです。「出張」というものに憧れていたので、実はめちゃくちゃ嬉しいです!
私はいつも、好きな場所に座れる自由席を選択して購入しました。ある時、指定席を予約している同僚から、「自由席ってどうやって予約するの?」と、不思議そうに尋ねられました。
「え、自由席の買い方が分からない人とか、いるのか・・・?」と内心思いながらも、懇切丁寧に説明しました。しかし、さらに「自由席ってどの列車でも乗れるの?」と、追加質問されました。私は、「だから自由席って名前がついてるんでしょ?」と言いかけて我慢しました。
乗車券・特急券の種類や、きっぷの買い方について、あまりにも知識のない同僚に驚きました。しかし考えてみると、世間一般の人たちの切符に関する知識レベルは、こんなものなのかも・・・?、と思い直しました。
鉄道会社の元同僚に、この話をしたら「我々が異様に詳しいだけで、普通の人は大体そんなもんよ。」と言われました。・・・大人や。
もはや、「自分の『常識』は、世間の常識とは少しズレている。」ということに気付きました。認識を改めねばならないと思いました。
新幹線って普段そんなに乗らないし、きっぷも買わないから、分からないかもね。
鉄道の仕事が分かるおすすめの本
色んなことがあった鉄道の仕事でした。ここまで読んで頂き、「ちょっと鉄道の仕事に興味があるかも・・・?」と、思ってくれた方もいらっしゃるでしょうか?
そんな方に、鉄道の仕事が良く分かる、おすすめの本を2冊ご紹介します。
キャリア教育に活きる! 仕事ファイル (22) 鉄道の仕事 /小峰書店編集部
鉄道運転士、鉄道運輸指令員、鉄道車両製造、乗換案内サービスシステム開発など、鉄道の様々な職種が紹介されています。実際に働いている方たちがどんな業務をしているのか、詳しく取材した内容が載っています。
この本を見て驚いたのは、知ってる人が載ってたことです。(知ってるどころか、隣で一緒に仕事してた人でした!)いや~、ビックリしました笑。
現場で働く人たちの生の声が聞けて、鉄道の仕事のことがよく分かるので、おすすめです。
鉄道の仕事まるごとガイド「ぷち鉄ブックス」 /村上 悠太
鉄道が大好きな小学生にピッタリの、楽しく役立つシリーズ「ぷち鉄ブックス」第6弾「鉄道の仕事」編です。鉄道に関わる様々な仕事を詳しく紹介し、小学校低学年のお子様でも、楽しく読んで理解して貰えるようにと、漢字には読み仮名がついています。
電車が好きなお子さんって、多いなぁと思います。私は車掌・運転士も経験しましたが、乗務中によく小さなお子様から手を振って貰ったり、羨望の眼差しで見つめられたことがあります笑。
電車が好きなお子様におすすめの本です。
まとめ
鉄道会社で18年働いてから一般企業に転職して驚いた7つの話 のまとめです。
いかがだったでしょうか?果たしてこの記事、需要あるのかな・・・?、と、戸惑いながらもスラスラと書けてしまいました笑。少しでも笑って楽しんで頂けたなら幸いです。
鉄道に関することや、鉄道会社の仕事について、また詳しく書いてきたいと思います。
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